不動産投資研究

建築面積等の各種面積と算入・不算入について

不動産投資を始めると様々な面積を目にする機会が多くなります。

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木造アパート等のいわゆる「1棟もの」を狙って、不動産投資を進める場合は、各種面積の定義や考え方はしっかりと理解する必要があります。

各種面積を理解しないと、建築単価がどの程度のものかを共通の尺度で評価できませんので、建物自体が割安なのか割高なのかの判断ができません。

また、屋外階段や共用廊下の各種面積に対する算入・不算入を理解しないと、土地から新築投資を進める上で、非常な重要な工程であるボリュームチェック(土地にどのくらいの延床面積の建物が建つか検討すること)を進める事ができません。

不動産投資のみならず、土地を購入して注文住宅を建てる場合も理解しておきたい基礎知識となりますので、本記事で整理していきます。

土地の面積について

土地面積

「土地の面積でしょ?そのまんまじゃん!!」と突っ込みたくなりますね(笑)

ただ、この土地面積にも、実は不動産登記簿に記載されている「公簿面積(登記面積)」と、家屋調査士が実際の土地の面積を計測した「実測面積」の2種類があります。

土地の種類が2種類存在している理由は、昔と現在の測量技術の差に起因しています。

昔(明示時代頃)登記された公簿面積は、その当時の未熟な技術での測量となっているので、現在の測量結果との差分が出てきてしまうのです。

公簿面積と実測面積は土地の売買の際に非常に重要となる面積です。

土地の売買方法は公簿面積を用いて売買する公簿売買か、実測面積を用いて売買する実測売買の2種類があります。

公簿売買で土地を購入した場合、購入後に土地を実測した結果、公簿面積より面積が小さくなったとしても、売主に対して土地面積縮小分の費用精算を求める事ができません。

よって、実測売買にした方が買主としてのリスクは低いのですが、スピード勝負の場合では、他の購入希望者が公簿売買での買付を優先され、購入のチャンスを逃す事もあります。

POINT

土地面積には公簿面積(登記面積)と実測面積の2種類ある。土地購入時に公簿売買とするか実測売買とするかは、リスクとリターンを天秤にかけ、慎重に考えよう

有効敷地面積

土地として有効(使える)な面積を指します。有効面積や敷地面積と略される事がありますが同じモノを指します。

建ぺい率や容積率は、有効敷地面積を元に計算されるので、土地面積(実測面積)より重要な面積です。

セットバックによる有効敷地面積の縮小

土地面積(実測面積)から有効面積が減る理由として、一番多いのはセットバックとなります。

セットバックとは?

2項道路(幅4m未満の道路のこと)に面する土地は、道路中心線から水平距離2mには建物を建築する事ができません。建物を建築するために、敷地境界線を後退させる事をセットバックとよびます。

セットバックを図示したものがこちらです。

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また、2項道路の片方が崖等の場合は 、道路中心線からのセットバックではなく、一方後退をする必要があるため、有効敷地面積がさらに大きく削られる可能性があるため注意が必要です。

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法面・法地(のりめん・のりち)による有効敷地面積の縮小

法面・法地(のりめん・のりち)がある場合も有効面積が縮小してしまいます。

法面・法地とは?

宅地として利用できない斜面の事を法面・法地(のりめん・のりち)と呼び、人工的に作られた斜面を指します。

この法面・法地部分の面積は有効面積に含まれない上に、法面・法地の面積が土地面積の30%以下であればその面積を明示しなくて良いため、購入対象の土地に傾斜地が含まれる場合は注意が必要です。

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さらに、地盤の弱い地域では、建物を建築する際に、法面・法地を以下のようにコンクリートで補強しなければいけない可能性もあります。補強された壁を擁壁(ようへき)と呼びますが、擁壁工事に多額の費用がかかる場合もあります。

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引用元:横浜市建築局

POINT

有効敷地面積は建ぺい率・容積率の計算の基準となる需要な面積。セットバックや法面・法地(のりめん・のりち)といった、有効面積が縮小される要因が無いかを徹底的にチェックしよう!!

建物の面積について

建築面積

建物の屋根を外して、上から見た面積です。建ぺい率の計算に使用します。

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床面積

建築物の各階の面積です。一番気になるのは、居室以外の建築物(ベランダ・バルコニー等)の面積の建ぺい率・容積率への算入・不算入だと思いますが、こちらは後述します。

延床面積

延床面積とは、建築物の各階の床面積の合計をいいます。これは簡単ですね。容積率の計算に使用します。

施工床面積

延床面積に算入しないバルコニーやロフト等を含んだ面積となります。

建築費の坪単価として利用される面積

基本的に建築物の「坪単価」の計算に利用されるのは延床面積となります。但し、建築物の坪単価の計算元となる建築費に含まれる費用によっては、坪単価は大きく異なってきてしまいます。

水道管の引き込み工事、外構費、地盤改良費、水道加入金は建築費の坪単価としては含めない事が多いです。但し、業者によっては鉄骨階段やエアコン等の設備まで、費用から除いて坪単価を算出する事で、一見安いように見せかけている事がありますので、注意が必要です。

POINT

建築費の坪単価は延床面積を元に算出される。但し、坪単価の算出元となる建築費にどこまでの費用が含まれているかをしっかりと確認し、建築費の高い・安いを判断しよう!!

各種面積への算入・不算入

木造アパートを建てる際に、各種面積への算入・不算入がわからなくなる、ロフト、ベランダ・バルコニー、廊下、階段、出窓といった建築物について

  • 建築面積への算入・不算入(建ぺい率を消化する?消化しない?)
  • 延床面積への算入・不算入(容積率を消化する?消化しない?)
  • 施工床面積への算入・不算入(参考程度)

をまとめてみました。

建築面積の算入・不算入については建築基準法で定められてます(建築基準法施行令2条1項2号)。各種面積への算入・不算入を考えるにあたり、建築基準法で定められている重要、かつ、基本的な考え方のポイントは以下となります。

POINT

外壁から1m以内の突き出た部分は不算入。それ以上はー1mして算入

こちらの考え方を図示したものが以下となります。

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こちらの内容は、ベランダ・バルコニー、廊下、階段の各種面積への算入・不算入でよく利用されます。

そもそも、ロフトの定義、バルコニーの定義、といった話もありますが、ここでは、木造アパートを建てる上で各種面積への算入・不算入について、「一般的」な見解私なりに整理した結果を記載します。

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POINT

開放廊下、屋外階段は延床面積には不算入(容積率を消化しない)だが、建築面積には一部算入する(建ぺい率は消化する)

ざっと整理しましたが、廊下・階段については、木造アパートで良く利用される開放廊下、屋外階段を前提にした記載としています。

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開放廊下と屋外階段

共同住宅の廊下の幅員については、建築基準法施行令119条にて、以下のように定められています。

床面積が100平米を越える場合は廊下の幅を1.2M以上の幅を持たせる必要がある

1.2mの廊下の場合は1mを差し引いた20cm×廊下の長さが建築面積に含まれてしまいます(建ぺい率を消化してしまいます)。

木造アパートの場合は、直通階段(建物の上層階または地下階から、地上または避難階に直通する階段)を設ける場合が多いですが、建築基準法施行令 第120条又は第121条の規定により、以下のように定められています。

屋外階段の幅は、直通階段にあっては90cm以上、その他のものにあっては60cm以上としなければならない

また、階段については耐力壁の有無や設置場所等によって算入範囲が変わってきます。そのため、正確な算入面積は建築士さんに計算してもらう必要があります。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

「面積」と一口で言っても、多種多様な考え方と取扱い方がありますね。

本記事で記載しているのは、不動産投資を進める上での本当に基本的な考え方となりますので、しっかり理解しておきましょう♪



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