投資方針

二兎を追え!~収益性と積算性のバランスとは~

前回の記事の続きである。

 

 

収益性と積算性がどのようなバランスの物件を選択すれば良いのかを決めるために具体的にシミュレーションを検討することにした。

 

もちろん、新築木造アパートがターゲットである限り、2年~3年での債務超過脱出は不可能である。

 

よって、10年後に何らかの理由で出口(売却)を迎えられずとも、規模拡大を進められるよう、10年後の時点で債務超過が解消された状態になれるような物件を選ぶ基準を見出す事を目標とし、シミュレーションを行った。

 

  • 物件価格5000万円
  • 借入金額5000万円(フルローン)
  • 借入金利2%
  • 借入期間35年

 

以上の前提で10年間の年毎のローン残債、積算価格、賃料収益の積算(賃益積算)、総資本の推移をシミュレートする。

 

シンプルにするため、表面利回りと積算割合(土地評価額)のみを変化パラメタとした。

 

表面利回りは新築アパートで散見される表面利回りである7%~8%台の中から7.5%、8.0%、8.5%の3つをピックアップし、それぞれケース1~3にまとめた。

 

シミュレーションの度に毎度出てくるが、基本となる収益シミュレーションは玉川陽介さん著の「不動産投資1年目の教科書」の付録である収益計算エクセルを利用している。

 

 

今回、賃料収入をローンの繰上返済にあてるシミュレーションを実施したかったが、玉川さんの収益計算エクセルは繰上返済のシミュレートができないため、今回のシミュレーションについては、賃料収益は単純に自己資本として積み上げする事にした。

 

すこし脱線するが、玉川さんの持論として低い金利で、せっかく借りた金額を繰上げ返済するくらいなら、繰上げ返済する金額を他の投資商品で運用した方が効率が良いため、繰上返済の考慮は収益計算エクセルには組み込んでいないらしい。まぁ、このあたりの考え方は人それぞれかな。

 
ケース1 利回り7.5%の新築木造アパートの場合の目標積算割合

 

まずは、購入時の物件価格に対する積算価格の割合が60%とした場合のシミュレーションを実施。

 

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全然ダメである。。。10年経過しても1000万円以上の債務超過状態。

では10年後に債務超過を脱出するための積算割合を逆算すると、、、

 

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となり積算割合は81%。

ケース2 利回り8.0%の新築木造アパートの場合の目標積算割合

 

では、積算割合が60%

 

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ぬぬ。。10年後は870万円弱の債務超過。。。

 

では同様に10年後に債務超過を脱出するための積算割合を逆算すると

 

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となり積算割合は78%。

 

ケース3 利回り8.5%の新築木造アパートの場合の目標積算割合

 積算割合60%の場合

 

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表面利回り8.5%でも700万円弱の債務超過。

では同様に10年後に債務超過を脱出するための積算割合を逆算すると

 

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となり積算割合は74%。

 
結論 

10年後に債務超過を脱出して、規模拡大を進られる収益性・積算性のバランスのとれた新築木造アパートは以下の通り

 

  • 表面利回り7.5%の場合、積算価格は81%以上
  • 表面利回り8.0%の場合、積算価格は78%以上
  • 表面利回り8.5%の場合、積算価格は74%以上

 

これまで基準としていた「表面利回り8.0%以上、積算価格は60%以上」という目標設定がいかに曖昧で、かつ、意味がない数字だったかを思い知らされた。

 

結論として、前述の基準を満たす収益性(利回り)や積算性(積算価格)の両輪のバランスとれた物件をターゲットとして物件選定を進める事とする。

 

おまけ

最後に、積算評価が60%とした場合、どの程度の利回りであれば10年後の債務超過が解消できるのかを逆算してみた。

 

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なんと、表面利回り10.7%が必要だった。。。

 

数年前はこのくらいの利回りで新築木造アパートを購入できた方もいらっしゃると思うと、何とも羨ましい限りである。



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